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①2019年2月9日 記事の充実化
インダクタンス負荷と大規模停電の関係性
本記事では、インダクタンス負荷と系統電圧・電流の関係性を説明し、系統との関連性を説明する。さらに、大規模停電との関連性についても学習する。
はじめに
近年、自然災害を起因とする大規模停電といった事象が多く発生した。発電・送電を担う電力の仕組みに関心がある人が増加した。
「計画停電」や、「重負荷となる時間帯は電力消費を抑えましょう」という何度も見たニュース。
ふと立ち止まり、「どういう理論なんだろう」と考えてみたら、よくわからなかった。電験の参考書、ネットの情報を収集し、理解することができた。色々発見があったので、解説していきたいと思います。
元々、高専や大学では電力系統の勉強をしてこなかったので、さっぱりわからない状態からのスタートだった。そのため、少し大変であった。
インダクタンス負荷が増大すると、電流が遅れる??
この話は、電験3種から1種の二次試験まで過去に出題されている。
「負荷が増大すると、電流の位相が電圧に比べ遅れる」ということをきちんと説明できるようになっておこう。
問題集によっては、「電圧に比べ」という言葉が抜けているからわかりにくい。
これは理解できた。インダクタンスというのは、コイルのことを示している。抵抗の値としては、「jwL」。
電流を求める式は、オームの方式より、I=V/jwL。
分母に虚数を示す「j」があるので、分子に持ってくると、「-j」。
「-j」は、-90°を示す。つまり、Vよりも、90°遅れているのである。
位相ズレの影響
「別に位相ぐらい遅れてもいいじゃないか?」と思う人もいるだろうが、良くない。
結論から述べると、発電機の界磁巻線が加熱されてしまうためだ。
以前の記事で説明したが、無効電力が増えると効率は低下し、機器を動かすエネルギーとなる有効電力が減る。
電験三種、二種時代ではここがよくわからなかった。これを理解しておくと、色々と役に立つ。
位相ズレをすることができたら、次は一歩踏み込んで、送電系統で考えてみよう。試験で役に立つし、電力の仕組みを理解できるだろう。
大規模停電に繋がる??
上述の理論と大規模停電との繋がりを考える。
まず、理解して欲しいことは、社会全体の負荷のうち、大多数を占めるのが「インダクタンス」であることだ。
つまり、電動機が多く存在しているということである。現在、個人の家庭で消費される電力の比ではないくらいの大型の機器が大量に駆動して、日本のモノづくりを支えているのである。
発電機に、負荷が一気にかかった瞬間を想像して欲しい。位相を保つために、界磁電流が多く流れる。発電機を回すタービンには過大な負荷がかかる。やがて限界を迎えると、火災や大規模故障を起こってしまう。
そのため、発電機は限界一歩手前で、送電系統から解列されるようになっている。
しかし、一つの発電機が解列するということは、他の発電機に負荷がかかることを示す。発電機が連鎖的に解列することで、大規模停電は起こる。
以上、「インダクタンス負荷だと電流が遅れる理由と大規模停電に繋がる理由」の記事になります。
インダクタンスの勉強から、大規模停電までの原理まで学習した。発電機毎に担うことのできる負荷量は決まっていることも学んだ。実際の運用としては、もっと複雑で、発電機解列に至る前に、水力発電の起動や負荷の切り離しを行う。今後、紹介していこうと思う。